キッチン周りの家具図を作成する際、「システムキッチンの標準寸法がわからない」「食器棚や吊戸棚の図面にどこまで詳細を記載すればよいのか」といった疑問を持つ方は少なくありません。
特に、住宅だけでなくオフィスや店舗のキッチン設計では、設備との取り合いや保健所基準への対応など、考慮すべき点が多岐にわたります。
本記事では、キッチン家具図の基本的な描き方から、システムキッチン・食器棚・カウンター・吊戸棚・流し台それぞれの標準寸法と図面記載のポイントまでを詳しく解説します。
設計者、施工管理者の方はもちろん、オーダー家具を検討中の施主の方にも役立つ実践的な内容です。
キッチン家具図の基礎知識

キッチン家具図を作成する前に、まず押さえておくべき基本的な知識を確認しましょう。
図面の種類、記載すべき情報、そして設計時に重視すべきポイントを理解することで、実務に活かせる正確な図面を描くことができます。
キッチン家具図とは
キッチン家具図とは、キッチン空間に配置される家具全般を表現した図面のことです。
主な対象となる家具には、システムキッチン、食器棚(カップボード)、カウンター、吊戸棚、流し台などが含まれます。
キッチン家具図では、一般的に以下の図面を作成します。
- 平面図: 上から見た配置と寸法を表現
- 立面図: 正面や側面からの外観を表現
- 断面図: 内部構造や設備との取り合いを表現
これらの図面を組み合わせることで、施工者や発注者が正確にキッチン空間をイメージでき、施工時のミスを防ぐことができます。
キッチン家具図で重要な3つのポイント
キッチン家具図を作成する際は、以下の3点を特に意識する必要があります。
1. 標準寸法の理解
使いやすいキッチンを実現するためには、人間工学に基づいた標準寸法の理解が不可欠です。
ワークトップの高さは「身長÷2+5cm」が目安とされ、一般的には85〜90cmが標準となります。
なお、キッチンの高さは日本工業規格(JIS)により、80cm・85cm・90cm・95cmの5cm刻みで規定されています。(※1)
※1 参考:日本産業標準調査会(JISC)
2. 設備との取り合い
キッチンは給排水・電気・ガスといった設備が集中する場所です。
図面には、これらの配管位置、コンセント位置、換気扇ダクトの経路などを明確に記載する必要があります。
特にシステムキッチンでは、ビルトイン機器の電源容量(150V/200V)や給排水の接続方法を正確に表現することが重要です。
3. 動線計画
効率的なキッチン作業を実現するには、「ワークトライアングル」を意識した配置が重要です。
ワークトライアングルとは、シンク・コンロ・冷蔵庫の3点を結んだ動線のことで、この3辺の合計が360~660cm(3.6~6.6m)の範囲に収まると作業効率が高まるとされています。
必ず記載すべき情報
キッチン家具図には、以下の情報を漏れなく記載しましょう。
- 外形寸法: 幅(W)×奥行(D)×高さ(H)をmm単位で記載
- 内寸: 収納スペースの有効寸法
- 設備位置: コンセント、給排水、ガス配管の位置と高さ
- 材質・仕上げ: ステンレス、人工大理石、集成材など
- 扉の開閉方向: 引き戸、開き戸、スライド扉などの種類と動き
これらの情報が正確に記載されていれば、施工者は図面を見るだけで必要な作業内容を把握でき、手戻りのリスクを大幅に減らすことができます。
家具別の図面作成ポイントと標準寸法
ここからは、システムキッチン、食器棚、吊戸棚、カウンター、流し台といった各家具について、標準寸法と図面作成時の具体的なポイントを詳しく解説します。
それぞれの家具には適切なサイズと記載すべき情報があり、用途に応じた設計が求められます。
システムキッチンの家具図面作成
システムキッチンは、キッチン家具の中心となる設備です。
図面作成では、作業効率と収納性を両立させる寸法設定が求められます。
標準寸法
| 項目 | 住宅用 | 業務用(参考) |
| 間口(幅) | 210~255cm | 180~360cm |
| 奥行 | 60~65cm | 60~75cm |
| 高さ | 85~90cm | 85~95cm |
住宅用システムキッチンでは、間口255cmが最も一般的です。
これは日本の住宅の標準的なLDK幅(2間=364cm)において、通路幅を確保しつつ設置できるサイズだからです。
一方、業務用では作業量に応じて300cm以上の大型サイズが採用されることもあります。
図面記載のポイント
システムキッチンの図面では、以下の情報を明確に記載します。
- ワークトップの材質: ステンレス(SUS304)、人工大理石、天然石など
- ビルトイン機器: IHコンロ/ガスコンロ、食器洗浄機、レンジフードの位置と型番
- シンク位置: 給排水接続位置、シンクサイズ(一般的に幅60~80cm)
- コンセント位置: 調理家電用(150V)とIH用(200V)を区別
- 換気扇ダクト: レンジフードからの排気経路
よくあるミス
- 冷蔵庫の設置スペースを図面に記載し忘れる
- コンセント位置が家電配置と合わず、延長コードが必要になる
- 配管スペースの考慮不足で、引き出しが配管に干渉する
これらのミスを防ぐには、平面図だけでなく断面図で配管スペースを確認し、立面図でコンセント高さを明記することが重要です。
食器棚・カップボードの家具図面作成
食器棚(カップボード)は、食器や調理器具の収納に加え、家電を置くスペースとしても機能します。
家族構成や収納量に応じた適切なサイズ設定が求められます。
標準寸法
| 項目 | 2人暮らし | 4人家族 |
| 幅 | 90cm | 120~180cm |
| 奥行 | 40~45cm | 45~50cm |
| 高さ | 180~210cm | 180~210cm |
食器棚の奥行は、収納する食器のサイズに合わせて選びます。
一般的な大皿(直径30cm程度)を収納するには40~45cmの奥行が必要です。
家電収納部は蒸気対策のため、奥行50~60cmを確保するのが理想的です。
図面記載のポイント
- 上台・中台・下台の区分: 各部の高さと用途を明記
- 家電収納部: スライド棚の位置、コンセント(150V、2~3口)の高さ
- 耐震対策: 耐震ラッチの位置、転倒防止金具の取付位置
- 可動棚: 棚板の枚数、棚ダボの間隔(通常30mm間隔)
- 扉の種類: 引き戸、開き戸、ガラス扉、オープン棚の区別
設計の注意点
食器棚の設計では、使用頻度と収納物の重量を考慮した配置が重要です。
- 家電収納の奥行: 炊飯器やポットは蒸気が出るため、奥行50~60cm必要
- 地震対策: 上置きと天井の間に突っ張り金具を設置するスペース(5~10cm)を確保
- 使いやすい高さ: 日常使いの食器は手の届きやすい85~140cmの範囲に配置
また、食器棚の下台はゴミ箱スペースとして活用されることも多いため、事前に用途を確認しておくことが大切です。
吊戸棚の家具図面作成
吊戸棚は、キッチンの上部空間を活用した収納です。
取付高さと耐荷重の設定が使いやすさと安全性に直結します。
標準寸法
| 項目 | 寸法 |
| 高さ(床から下端) | 150~160cm |
| 高さ(床から上端) | 210~230cm |
| 奥行 | 35~40cm |
| 幅 | システムキッチンの幅に合わせる |
吊戸棚の下端の高さは、「使用者の身長-20~25cm」が目安とされています。
これにより、目線より少し下に吊戸棚の下端がくるため、中身が見やすく、無理なく手が届く範囲になります。
図面記載のポイント
- 取付高さ: 床からの高さ、ワークトップからの距離(通常50~60cm)
- 下地補強: 石膏ボード下地の場合は補強材の位置と範囲を明記
- 耐荷重: 棚板1枚あたり10~15kg、吊戸棚全体で30~50kgを目安
- 昇降式の場合: 可動範囲、操作方法(手動/電動)
安全性の確保
吊戸棚は壁面に取り付けるため、下地の確認が非常に重要です。
- 壁下地の種類: GL工法(接着剤で石膏ボードを貼る)の場合は、必ず補強材を設置
- 地震対策: 耐震ラッチ(揺れで扉が開かない機構)や脱落防止金具を図面に明記
- 重量配置: 重いものは下段に収納するよう、図面に注記
また、レンジフードとの位置関係も重要です。
レンジフードの高さは一般的にワークトップから80~90cmですので、吊戸棚との干渉を避ける配置を心がけましょう。
カウンターの家具図面作成
カウンターは、キッチンの用途に応じて様々な形態があります。
対面キッチンのカウンター、オフィスの給湯室カウンター、店舗のバーカウンターなど、用途別の標準寸法を理解することが重要です。
用途別標準寸法
| 用途 | 高さ | 奥行 | 幅 |
| キッチンカウンター | 85~90cm | 40~45cm | 120~180cm |
| 受付カウンター(オフィス) | 100~110cm | 60~70cm | 150~240cm |
| バーカウンター | 100~105cm | 40~50cm | 120~180cm |
図面記載のポイント
- カウンタートップの材質: 集成材、メラミン化粧板、ステンレス、人工大理石など
- 天板の厚み: 通常30~40mm(大型カウンターは50mm)
- 足元スペース: 椅子を使用する場合は60~70cmの膝スペースを確保
- 配線計画: LAN配線、電源コンセントの位置と数量
- 収納の有無: 扉付き収納、引き出し、オープン棚などを明記
用途別の設計ポイント
キッチンカウンター: 対面キッチンの立ち上がり壁として機能することが多く、高さは85~90cmが標準です。
ダイニング側から手元が見えないよう、立ち上がりの高さを20~30cm設けることもあります。
受付カウンター: 来客対応を考慮し、立った状態での視線の高さ(100~110cm)に設定します。
カウンター下には書類や小物を収納できるキャビネットを設けることが一般的です。
バーカウンター: ハイチェア(座面高60~70cm)との組み合わせを前提とし、高さは100~105cmが理想的です。
カウンター下にはグラスラックや冷蔵庫を配置するスペースを確保します。
流し台(業務用)の家具図面作成
流し台は、特にオフィスの給湯室や飲食店の厨房で使用される業務用シンクを指します。
保健所基準への適合が求められる場合もあるため、詳細な仕様記載が必要です。
標準寸法(業務用)
| 項目 | 1槽シンク | 2槽シンク |
| 幅 | 60~90cm | 120~180cm |
| 奥行 | 60~75cm | 60~75cm |
| 高さ | 80~85cm | 80~85cm |
| 槽深さ | 20~30cm | 20~30cm |
飲食店など保健所の許可が必要な施設では、1槽あたり幅45cm以上、奥行36cm以上、深さ18cm以上という基準を満たす必要があります。
また、食材洗浄用と食器洗浄用を分けるため、最低2槽以上の設置が義務付けられている自治体が多いです。
ただし、詳細な基準は自治体により異なる場合があるため、必ず管轄の保健所に事前確認することをおすすめします。(※2)
※2 参考:厚生労働省 食品衛生法
図面記載のポイント
- シンクの槽数・サイズ: 各槽の内寸を明記
- 材質: ステンレスSUS304、板厚0.8~1.0mm
- 給排水接続: 給水位置、排水位置(グリーストラップへの接続経路)
- バックガード: 壁面への水はね防止用、高さ15~20cm
- 保健所基準: 飲食店の場合は基準適合を明記
業務用特有の注意点
業務用流し台では、清掃性と耐久性が重視されます。
- 床排水トラップ: 床面に設置する排水トラップとの接続を図面に明記
- 洗剤置き場: バックガード上や側面に洗剤・スポンジ置き場を確保
- 水栓の種類: シングルレバー、2ハンドル、センサー式など用途に応じて選定
- 温水対応: 保健所基準では温水使用が求められることもあり、給湯設備との接続を記載
オフィス給湯室の場合は、コンパクトな1槽シンク(幅60~90cm)が一般的ですが、飲食店では食材洗浄と食器洗浄を分けるため、2槽以上のシンクが必要になります。
キッチン家具図作成の実践テクニック
個々の家具の寸法を理解したら、次はキッチン全体を効率的に機能させるための実践的なテクニックを学びましょう。
作業動線の計画、設備との取り合い、そして住宅用と業務用の設計の違いを把握することで、より使いやすいキッチン空間を実現できます。
配置レイアウトの基本
キッチン家具の配置では、作業効率を高める動線計画が最も重要です。
ワークトライアングルの考え方
ワークトライアングルとは、キッチン作業の3つの拠点(シンク・コンロ・冷蔵庫)を結んだ動線のことです。
この3辺の合計が360~660cmの範囲に収まると、移動距離が適切で作業効率が高まるとされています。
- 短すぎる場合(360cm未満): 作業スペースが狭く、複数人での作業が困難
- 長すぎる場合(660cm超): 移動距離が長く、作業効率が低下
- 理想的な形状: 正三角形に近い形が最も効率的
通路幅の確保
キッチン周辺の通路幅も快適性に大きく影響します。
- 1人作業: 80~90cm(引き出しや扉を開けるスペースを含む)
- 2人作業(対面キッチン): 90~120cm(すれ違いが可能な幅)
通路幅が狭すぎると作業しにくく、広すぎると動線が長くなります。
図面作成時は、家族構成や使用人数を確認し、適切な通路幅を設定しましょう。
設備との取り合い図の描き方
キッチン家具図では、家具本体だけでなく、設備との接続を明確に表現することが重要です。
給排水配管の記載
- 配管径(一般的に給水13mm、排水40~50mm)
- 配管の高さ(床からの寸法)
- 排水勾配(1/50~1/100)
- 止水栓の位置
電気配線の記載
- コンセント位置と高さ(床から120cm程度が作業しやすい)
- 電源容量(調理家電用150V、IH用200V)
- 専用回路が必要な機器の明記
ガス配線
- ガス種別(都市ガス/プロパンガス)
- ガス栓の位置と高さ
- ガス警報器の設置位置
換気扇ダクト
- レンジフードからダクトまでの経路
- ダクト径(一般的に150mm)
- 排気口の位置(外壁または天井)
これらの情報は、平面図だけでは表現しきれないため、断面図や詳細図を併用して明確に伝えることが大切です。
住宅用 vs 業務用の違い
キッチン家具図は、住宅用と業務用で重視するポイントが異なります。
| 項目 | 住宅用 | 業務用(オフィス・店舗) |
| 重視点 | デザイン性、使いやすさ | 耐久性、清掃性、保健所基準 |
| 材質 | 木質系、人工大理石 | ステンレス主体 |
| 図面詳細度 | やや簡略可 | 詳細な仕様記載必須 |
| 耐荷重 | 一般家庭の使用を想定 | 業務用途の高頻度使用を想定 |
| メンテナンス性 | 定期的な清掃・点検 | 日常的な清掃・頻繁な点検 |
住宅用では、生活動線やインテリアとの調和を重視した設計が求められます。
一方、業務用では、保健所基準への適合、清掃のしやすさ、耐久性が最優先されます。
特に飲食店や食品を扱う施設では、保健所の営業許可を得るために、図面段階で基準を満たしているかを確認することが不可欠です。
よくある質問(FAQ)
キッチン家具図で最も重要な寸法は?
作業台(ワークトップ)の高さです。一般的には「身長÷2+5cm」が目安とされ、標準的な高さは85~90cmです。例えば身長160cmの方なら85cm、身長170cmの方なら90cmが適切です。高さが合わないと長時間の作業で腰痛や肩こりの原因になるため、使用する人の身長を事前に確認し、最適な高さを設定することが重要です。
既製品と造作家具、図面の書き方は違う?
はい、記載内容が異なります。既製品の場合はメーカー名と型番を明記し、メーカー提供の図面を参照図として添付します。一方、造作家具の場合は詳細な寸法(外寸・内寸)、材質・仕上げ方法、接合方法や金物の種類など、製作者が図面だけで製作できるレベルの詳細図が必要です。既製品は配置図が中心、造作家具は製作図として機能する点が大きな違いです。
オフィス給湯室のキッチン図面で注意すべきことは?
オフィス給湯室は住宅用とは異なり、コンパクトサイズ(幅120~150cm)で流し台+吊戸棚のシンプルな構成が一般的です。冷蔵庫・電子レンジスペース(各60cm程度)の確保、清掃性重視のステンレス天板、複数人が同時使用できる動線、電源容量の確保(電子レンジ、ポット、冷蔵庫)、換気扇の設置などが重要です。多くの社員が短時間で使用するため、シンプルで使いやすく清掃しやすい設計が求められます。
図面作成を外注する際のポイントは?
外注を成功させるには事前の情報提供が重要です。設置場所の寸法(壁・梁・柱・配管位置)を正確に測定し、使用目的(誰が、何を、どのように使うか)、収納するもの(食器の量、家電の種類とサイズ)、予算と優先順位、納期を明確に伝えましょう。また、図面の種類(平面図、立面図、断面図)の確認、修正回数と追加費用の有無、施工まで対応可能か、アフターフォローの有無を事前に確認することが大切です。特にオフィスや店舗の場合、施工から検査まで一貫して対応できる業者を選ぶとスムーズに進行します。
まとめ
キッチン家具図の作成では、各家具の標準寸法を理解した上で、使う人の身長や動線、設備との取り合いを考慮することが重要です。
本記事で紹介した内容をまとめると、以下のポイントが特に重要です。
- システムキッチン: 間口255cm、奥行65cm、高さ85~90cmが標準。ワークトライアングルを意識した配置が作業効率を高める
- 食器棚・カップボード: 家族構成に応じた収納量の確保。家電収納は奥行50~60cm必要
- 吊戸棚: 取付高さは身長-20~25cmが目安。耐震対策と下地補強を忘れずに
- カウンター: 用途別に高さが異なる。キッチンカウンター85~90cm、受付カウンター100~110cm
- 流し台(業務用): 保健所基準(1槽あたり幅45cm以上、深さ18cm以上)への適合が必要
住宅用と業務用では重視するポイントが異なりますが、いずれの場合も図面に必要な情報を漏れなく記載することで、施工時のトラブルを防ぐことができます。
株式会社リゴーレでは、オフィス・店舗のキッチン家具図作成から施工までワンストップで対応しています。
保健所基準に適合した業務用キッチンの設計実績も豊富です。
図面作成でお困りの際は、お気軽にご相談ください。










