クローゼット家具図は「何をどこに掛けるか/畳むか」という収納計画と、ハンガーパイプ・棚板・引出しの寸法が正確に連動しないと、現場で「入らない」「使いにくい」が起きやすい領域です。
ここでは、壁面クローゼット・ウォークインクローゼットを中心に、図面作成で押さえるべき標準寸法と記載ポイントを実務目線で整理します。

クローゼット家具図の「型」を整理する

クローゼット家具図は、大きく「壁面クローゼット(壁付け)」「ウォークインクローゼット」「コーナークローゼット」の3タイプに分かれます。
それぞれ図面で確定すべき情報が異なるため、まずタイプ別の考え方を整理しておきます。

タイプ別の特徴と図面で押さえるポイント

タイプ 主な構成 図面で特に注意すること
壁面クローゼット ハンガーパイプ+棚板(扉付き) 開口・扉方式・有効奥行きの確保
ウォークイン パイプ+棚+引出し+通路 通路幅・コーナー納まり・照明
コーナー 斜めまたはL字配置 デッドスペースの活用・扉の干渉

タイプが確定したら、次は「何を収納するか」を整理します。
衣類の種類(コート・スーツ・シャツ・パンツ)によって必要な有効丈が変わり、ハンガーパイプの高さや段数が決まります。
この順序を守ることで、図面の手戻りを大幅に減らすことができます。

標準寸法の基本|ハンガーパイプ・奥行き・棚ピッチ

クローゼット家具図で最も判断を迷わせるのが「奥行き」と「ハンガーパイプの高さ・間隔」です。
衣類の種類(コート・スーツ・シャツ)によって必要な有効丈が変わるため、収納対象を先に整理してから寸法を決めるのが最短ルートです。

ハンガーパイプの標準寸法

ハンガーパイプの高さは、収納する衣類の最長丈に「ハンガー高さ(約150mm)+ゆとり(50mm前後)」を加えた値が基本です。
コートやロングワンピースを1段掛けする場合と、シャツ類を2段掛けにする場合では、パイプ高さが大きく異なります。
図面作成時は、使用者の身長や衣類の種類を事前にヒアリングしたうえで、下表を目安に設定してください。

衣類の種類 着丈の目安 ハンガー高さ 床クリアランス 推奨パイプ高さ
シャツ・ブラウス 700~800mm 150mm 50mm 900~1,000mm
ジャケット・スーツ上 800~900mm 150mm 50mm 1,000~1,100mm
スカート・パンツ(折り) 900~1,000mm 150mm 50mm 1,100~1,200mm
コート(ミドル~膝丈) 1,000~1,200mm 150mm 50mm 1,200~1,400mm
コート(ロング) 1,200~1,400mm 150mm 50mm 1,400~1,600mm
ロングドレス・マキシ丈 1,400~1,600mm 150mm 50mm 1,600~1,800mm
子ども服(学童) 500~700mm 120mm 50mm 670~870mm

奥行きと通路幅の目安

奥行きは「ハンガーに掛けた衣類の前後幅」が基準になります。
一般的な衣類ハンガーの幅は400~450mm(サイズ・性別による)で、扉厚・内部仕上げを考慮すると、有効奥行きとして550~600mmを確保するのが標準です。
ウォークインクローゼットでは、さらに「人が動ける通路幅」が加わるため、全体の平面計画と合わせて確認します。

項目 推奨寸法(目安) 備考
ハンガー収納奥行き 550~600mm ハンガー幅+ゆとり。扉厚も考慮
棚・引出し奥行き 400~450mm 小物・ニット類に対応
ウォークイン通路幅 600mm以上(推奨800~900mm) 着替え動作を含む場合は900mm以上
コーナーデッドスペース 200~350mm(配置・角度により異なる) 可動棚・ラック活用で有効化

図面で明記すべき「金物・建具・照明」

ハンガーパイプの種類・取付高さ・棚受け方式、そして扉(折れ戸・引き戸・開き戸)の選定は、図面段階で確定していないと現場での判断が分かれます。
加えて、ウォークインでは照明計画も家具図と連動して記載すると、設計意図が明確に伝わります。

家具図に記載しておきたい主な項目

ハンガーパイプは径(φ25~32mmが住宅用として一般的)・材質(スチール(ステンレス)・アルミが主流。
木製は造作インテリア向けで特殊用途)・取付ブラケットの位置を明記します。ブラケットは長さ900mm以内ごとに1か所を目安に設けると、たわみを抑えることができます。

棚板は厚み・可動or固定・棚受け種類・ピッチ(32mmが標準)を記載します。
ニット類など重量物が増える場合は、棚板スパンが600mmを超えるあたりから補強や中間支持の検討が必要です
(Woodone内部収納仕様:棚板長400mmで25kg→600mmで20kg→780mmで 15kgと耐荷重が低下。詳細はメーカー耐荷重表を参照)。

参考:Woodone 内部収納 棚板耐荷重一覧 / Panasonic アイシェルフ 仕様

扉方式は、開口前のスペース確保が難しい場合は引き戸、全開時の視認性を重視する場合は折れ戸が有利です。
図面には扉の開閉軌跡と有効開口幅を必ず記載します。

照明は、ウォークインクローゼット(1畳以上)では家具図と連動した照明計画を作成すると、スイッチ位置や配線の見落としを防げます。
棚上部やハンガーパイプ下に補助照明(LED棚下灯)を設けておくと、収納物の色や種類が見分けやすくなり、日常の使い勝手が向上します。
壁面クローゼット(扉付き)では、扉の開閉に連動するセンサー付き照明も選択肢に入れておくと、毎回スイッチを操作する手間を省けます。

ウォークインクローゼットの図面作成ポイント

ウォークインは「平面計画(通路と収納の配分)」と「立面計画(各面の収納構成)」を必ずセットで作成します。特に、L字・コの字の場合はコーナー部の納まりと、人が動ける有効スペースの確保が図面の核心になります。

ウォークイン図面で必ず確認すること

平面図では、各面に対してハンガー収納・棚・引出しのどれを配置するかをゾーニングし、通路の有効幅(推奨800~900mm)を確保できているか確認します。
夫婦2人が同時に使う場合は900mm以上を目安にすると、動作が干渉しません。

立面図では、各面の収納タイプを色分けまたは凡例で整理すると、施工者・クライアント双方に意図が伝わりやすくなります。
コーナー部のデッドスペース(奥行き200~350mm程度・ 配置や角度により異なる)は、可動棚やフリーラックで 有効活用する案を検討します。

出入口の有効幅は最低600mm、バリアフリー対応が必要な場合は750mm以上(住宅性能表示基準等級3)、車椅子使用者が対象の場合は800mm以上を確保します。
扉閉時の換気(通気ガラリ・アンダーカット等)も図面段階で計画しておくと、カビ・湿気トラブルの予防につながります。

よくある質問(FAQ)

ハンガーパイプの高さは何mmが標準ですか?

収納する衣類の種類によって異なります。コート類は有効丈1,600mm以上(ロングコートは1,800mm以上)を確保。
シャツの2段掛けなら上段1,700~1,800mm・ 下段900~1,000mm前後が目安です。
使用者の身長と収納物をヒアリングしてから設定するのが確実です。

ウォークインの通路幅はどのくらい必要ですか?

最低600mmですが、着替え動作を含む場合は800~900mmが推奨です。
夫婦2人が同時に使う場合は900mm以上を確保すると快適に使えます。
図面では「有効通路幅」として明記してください。

折れ戸と引き戸、どちらを選ぶべきですか?

開口前のスペースが取れない場合は引き戸が有利です。
折れ戸は全開時の視認性が高いメリットがあります。
図面では扉の開閉軌跡と有効開口幅を必ず確認・記載してください。
なお、引き違い戸はスペース効率に優れますが、 有効開口幅がクローゼット間口の約半分に制限されます。
間口が広く全面を使いたい場合は、折れ戸または 連動引き戸が適しています。

ハンガーパイプのブラケットはどのくらいの間隔で設けますか?

一般的に900mm以内ごとに1か所が目安です。
スパンが長くなるほどパイプがたわみやすくなるため、コート類など重量物が多い場合は間隔を短めに設定することを推奨します。

コーナー部のデッドスペースはどう処理しますか?

コーナー部に生じるデッドスペース(奥行き200~350mm程度・ 配置や角度により変わります)は、可動棚・フリーラック・ 引出しユニットで有効活用するのが一般的です。
図面段階でコーナー部の納まりを断面図で確認しておくと、施工時の判断ミスを防げます。

まとめ

クローゼット家具図は、寸法の正確さだけでなく「誰が・何を・どのように収納するか」という前提を図面に落とし込むことが品質を左右します。
タイプの確定・収納物からの寸法の逆算・金物と建具の明記・平面と立面のセット作成、この流れを守ることで現場での手戻りを大幅に減らすことができます。
使い手の生活動線と収納物の種類・量を丁寧にヒアリングし、それを寸法と納まりに変換する作業が、設計者としての付加価値になります。