同じ建築の図面ながら、施工図と実施図は違います。
その違いを知るためには、建築が建つまでの工程を知る必要があります。
建築は計画から始まります。始めの図面は単線で書かれる簡単なものです。
計画の時点では、建築が実現するかどうかはわかりません。
建築が実現可能なものであることがはっきりしてから、設計者により実施図が書かれます。
実施図の目的は建築確認申請を通すことです。
仕上げ表には材料の一般名称が書かれ、メーカーの品番までが書かれることはありません。
実施図は工事に使える精度を持っていません。
実施図とは?
建築の図面は設計図と施工図に分かれます。
実施図は計画図と共に設計図に含まれ、書かれる時期は計画図と施工図の間になります。
計画図の段階では建物が実現するかどうかもわかりません。
計画案も複数の案が出され、その中から実際に使われる案が選ばれます。
図面の縮尺は、まだ、1/100程度です。
建物が実現するすることがはっきりし、平面計画が確定した段階で実施図の作成が始まります。
実施図に着手した段階で、施主に対して図面の料金が発生します。
図面は建築確認申請を通すために書かれます。また、見積りをするのにも使われます。
図面の縮尺は矩形図で1/30程度、部分詳細でも1/10程度が最も大きな縮尺です。
この段階では材料や設備機器は一般名称で書かれ、
実際に使用する製品名までが書かれることは稀です。
したがって、工事に必要な細かい寸法はわからず、そのまま施工に使うことはできません。
見積り金額の結果次第では設計の変更もありうるので、細かい寸法を出しても意味がありません。
施工図と実施図の違いは?
施工図は建築確認申請がおり、見積りが確定し、施工業者に工事が発注されてから書かれます。
すなわち、設計図の内容が確定し、工事が本格的に始まる前に書かれるのが施工図です。
施工図は早く工事が行われる躯体図から書かれるので、工事中も他の工事の作図作業が続きます。
施工図を書くのは、工事を請け負った建設会社か、その指示を受けた図面会社です。
施工図の目的は工事をすることにつきます。
現場の職人がその図面を見ながら作業ができるまでに精度が高められます。
材料や設備機器は一般名称ではなく、実際に使う製品名が書かれます。
したがって、寸法ははっきりと確定します。図面の縮尺は大きく、場合によっては原寸図も書かれます。
施工図の作成では収まりの確認が中心的な作業となります。
最近は設計図もCADで書かれるため、寸法の精度が良くなり、
設計図の段階から納まりが確認できるようになりました。
施工の段階では収まりの精度がさらに高められます。
図面の作成は施工図で最後となり、後は実際の工事が行われます。