建築設計に欠かせない図面のひとつである「立面図」。
建築に携わる方なら一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、その意味や見方、作成方法について正確に理解できている方は意外と少ないのではないでしょうか。
この記事では、立面図とは何かという基本的な定義から、平面図・断面図との違い、4方向からの見え方、法的な規制との関係、さらには効率的な作成テクニックやおすすめのCADツールまで、建築初心者にもわかりやすく解説します。

立面図の基本を理解する

立面図は建築設計において非常に重要な図面です。
この章では、立面図の意味や役割を中心に、平面図・断面図との違い、そして各方向からの見え方の特徴まで、建築初心者にもわかりやすく丁寧に解説していきます。
まずは立面図の基本を押さえましょう。

立面図とは?建築における基本的な意味と役割

立面図とは、建物の外観を東西南北の4方向から見た姿を2次元で描いた図面のことです。
建築図面の中では「意匠図」に分類され、主に以下の情報が盛り込まれます。

  • 建物の高さ・幅
  • 窓やドアなどの開口部の位置・大きさ
  • 屋根の勾配や形状
  • 外壁や屋根の仕上げ材、色彩

立面図は建築確認申請や施工現場への指示にも使われる重要な図面で、設計者の意図を視覚的にわかりやすく伝える役割を担っています。
縮尺は1/100が一般的ですが、プロジェクトによっては1/50などの詳細な図面が求められることもあります。

平面図・断面図との違いと関係性

建築設計における代表的な3種類の図面には、それぞれ異なる視点があります。

図面の種類 視点 表現内容
平面図 真上から 間取り、壁の位置、動線など
断面図 垂直に切断した視点 階高、天井高、構造内部
立面図 正面や側面 高さ、窓や扉の配置、外観デザイン

これら3つは補完し合う存在であり、立体的な建物を正確に表現するために欠かせません。

立面図に表される4方向とその見え方

立面図では、建物を東西南北の4方向から見た図をそれぞれ作成します。図面には必ず方位を明記し、「東立面図」「西立面図」「南立面図」「北立面図」などと記載されます。
建築確認申請用の立面図では以下の要素が明確に示されている必要があります。

  • 縮尺と方位の記載
  • 寸法の明示
  • 開口部や建築設備の位置・形状
  • 外装の仕上げ材と色彩(例:マンセル表色系)
  • 色彩の面積比(大規模建築物の場合)

立面図が全周面で着色された完成予想図となっていれば、建築確認申請時に一部の図面提出が免除されるケースもあります。

立面図の描き方と活用法

ここでは、実務で使える立面図の描き方や法的チェックポイント、そして作業効率を高めるツールの使い方までを具体的に紹介します。
基本を理解したうえで、実際にどのように立面図を作成・活用すべきかを詳しく見ていきましょう。

初心者向け|立面図の基本的な描き方と手順

立面図は平面図をもとにして作成します。基本的な描き方の流れは次の通りです。

  1. 平面図と断面図を用意(壁・建具・階高の情報)
  2. GL(グランドライン)を基準に垂直に足線を下ろす
  3. 軒高・屋根形状を補助線で描く
  4. 開口部や外装を描き入れる
  5. 寸法・記号・方位などを追記

手描きでも可能ですが、実務ではCADソフトを使うのが一般的です。

立面図で確認すべき法的なポイント

立面図はデザインのためだけでなく、法規制の確認にも使われます。
確認すべき主な項目は以下の通りです。

確認項目 内容
日影規制 1/200や1/500縮尺で建物の高さ・地面接触位置を表示
高さ制限 軒高・最高高さ・平均地盤面の位置などを図示する
真北方向の角度 日影計算に関わるため、主要壁面の角度を明記

これらを正しく反映することで、建築確認申請がスムーズに進みます。

作図を効率化するおすすめのCADツールとテクニック

立面図作成には以下のようなCADソフトが活用されます。

  • Jw_CAD:無料で使える2D CAD。教育用途や中小案件にも◎
  • AutoCAD:業界標準の高機能CAD。レイヤ管理・寸法ツールも豊富

効率アップのコツ:

  • 要素ごとにレイヤを分けて管理(例:壁、開口部、寸法線)
  • 複写機能で繰り返し作業を自動化
  • クラウド連携でチーム作業の効率化

近年は写真から自動で面積を算出する機能を備えたAI対応のソフトも登場し、作図スピードが格段に向上しています。

よくある質問(FAQ)

立面図はどんな場面で必要になりますか?

建築確認申請やデザイン確認、工事現場での指示書などで必要となります。外観や高さに関する情報を伝えるために欠かせません。

建築士以外の人でも立面図を理解できますか?

図面の基本的な見方や凡例に慣れていれば、専門知識がなくても立面図を読み取ることは可能です。色分けや注釈があると理解しやすくなります。

立面図には何を記載する必要がありますか?

高さや軒高、開口部の位置・形状、仕上げ材や色彩、方位、縮尺、寸法などが求められます。

初心者でも立面図は描けますか?

平面図と高さ情報があれば基本的な立面図は描けます。CADソフトを使えばより効率的に作図可能です。

まとめ

立面図は、建物の外観を正確に表現するために欠かせない建築図面です。
平面図や断面図と連携して使うことで、建築物の構造や意匠を多面的に把握・伝達できます。
初心者でも基本を押さえれば描くことが可能であり、CADソフトを活用することで効率よく高品質な図面を作成できます。
また、建築確認申請などにおいては、法的な要件を正しく反映させることが重要です。
実務においても、正確な立面図はプロジェクトの円滑な進行を支える要となります。
この記事を参考に、ぜひ立面図の理解と活用を深めていってください。